また騙される?

 

 10月27日、わが塩田知事は、今年12月末に改選期を迎える原子力専門委員会のメンバーをそのまま留任させると表明した。九電から2億5千万円をもらった、あの宮町座長を含めてである。
 この話は、後日、知り合いから聞いたけど、南日本新聞で見た覚えはない。慌てて、翌28日の新聞を捜し出して、ページをめくるけどない。
 7月の知事選の公約で、専門委には反対派も入れて(複数)しっかり議論すると言っていた。さらに、専門委で結論が出なければ県民投票をするとまで。原発反対派の中でも、この塩田氏の公約に期待して投票した人もいただろう。
 これは公約破りの大ニュースだ。そうなら、大きな記事になるはずと、大きな見出しの活字を捜した。けど、ない! 気を取り直してじっくり見返したら、あった。1段の小さな見出し。ベタ記事というやつだ。
 どういうこと?南日本新聞。こっそりスルーしたいわけ?
 記事をよく読むと、今回は留任させるが、2年後の改選では反対派を入れるとある。なるほど、まだ先のことだからいいや、なんて思ってはいけない。
 専門委の大きな焦点は、あと3年半後の2024年に40年の寿命を迎える川内原発1号機の20年延長問題だ。
 スケジュールを確認しよう。
 2024年7月4日、1号機40年寿命
 2023年7月4日、延長申請期限
 2023年1月、新メンバー専門委
 次の改選から、九電の申請期限まで6カ月しかない。これまでの会議の開催ペースは年に4、5回。半年なら2、3回となる。
 月に1回開いても6回だ。20年延長の問題は多岐にわたる。
 第一に、川内の使用済み燃料プールは、あと9年で満杯となる。九電は、持って行くところがないから、敷地内に乾式中間貯蔵施設を作るはらだ。20年延長と、敷地内の乾式中間貯蔵施設はセットなのである。
 この施設とて寿命は50年。50年経つと、中性子の遮蔽に使うエポキシ樹脂が劣化して中性子線(JCO事故で飛んだ)がどんどん飛ぶようになる。
 ところが50年後、この核のゴミの行き先は全く目途が立っていない。というより、全くの白紙、計画さえもないのだ。
 20年延長は鹿児島が核のゴミ捨て場になるという覚悟を伴うことになる。
 このほか、原子炉の劣化、原発周辺の活断層、火山、日常的に放出される放射能の健康被害、温廃水による環境破壊。山ほどある。たった数回の会議で「しっかり議論」できるんかいね。


カニ捕り紀行

 

 7月、奄美博物館の館長が出版の打ち合わせで事務所に来た。
 ひょんなことから、ミナミスナホリガニなるものがいて、奄美の人は食べているという話が出た。
 ナヌ!食べる?生き物食いのプロを自認する『海辺を食べる図鑑』の著者としては聞き捨てならぬ情報だ。この本の続巻も準備中だ。これは、捕りに行かねばならぬ!
 ところで、スナホリガニ、知らないよね。吹上浜で貝掘りしていて、爪の先くらいの生き物がサッと砂に潜るのを見たことがあるかもしれない。こいつは、九州以北にいるハマスナホリガニ。1cm内外の大きさだ。
 まずは、ミナミを捕る予行演習にハマ捕りに行くことにした。
 お盆の墓参りに小学生の甥と姪に会った。ちょうどいい。カニ捕りに行くかと聞いたら、「行く行く」ときた。吹上浜に出て、1匹10円だよ、と言うと元気よく波打ち際に走った。
 捕り方はこうだ。干潮の波打ち際のひざ程度の深さの砂を、魚捕り用の網ですくう。波に当てると細かい砂は出ていくのでハマスナホリガニが残る。30分足らずで、30匹ほど捕れた。
 持ち帰って素揚げにしたらまるでエビセンだ。腹の足しにはならないが、焼酎のアテにはもってこいだ。こりゃ、旨い。

 

 

1匹10円でよく働いた姪

1匹10円でよく働いた姪  

 

ハマスナホリガニ

 ハマスナホリガニ

 

 奄美以南の海辺にいるミナミスナホリガニは体長4cm。ハマの4倍だ。体積(重量)は4の3乗だから64倍。十分に食べがいがある。
 10月2日大潮の日に、奄美行きを決めた。もちろん、博物館の原稿受け取りという「仕事」のおまけだ。ところが直前に、「原稿ができていない」という連絡。ほかにもいろいろ予定を入れたので今さら変更するわけにもいかない。結局、カニ捕りが第一の目的になってしまった。
 フェリーにバイクを載せて、いざ奄美へ。目的地は大和村大棚の砂浜。13時、干潮。11時から開始した。
 第一の誤算は、奄美の砂の粒径が大きく波に当てても網から砂が出ていかないこと。掘った砂を上まで運んでばら撒かざるをえない。第二の誤算はいないこと。何回砂を運んでも、いない。20回も掘れば息が上がる。捕れなきゃ何のために来たのか。21回目、やっと1匹ひっくり返った。これぞ、ミナミ。やったー。捕ったぞー。
 1匹いたら、もう1匹いる。自分を励ましながら、延々と砂掘りが続いた。10月とはいえ、炎天下。およそ2時間、300回、2トンは掘っただろうか。
 疲れ果て、何度も砂の上に寝転んだ。結局、収穫13匹。死んだら殉職になるだろうか、なんて思いながら、なんとか第一の目的を達成した。

 

 

大棚の砂浜

大棚の砂浜   

     

 ミナミスナホリガニ

 

抜群の素揚げ   

 

これも旨い塩茹で

 

 


すぐに手を引け!

 

 鹿児島の薩摩半島の西海岸には、日本三大砂丘といわれる吹上浜が、南北40kmにわたって連なっている。
 私は、教員の父について10歳まで吹上浜北部に位置する市来で暮らした。
 浜辺でキサゴの貝殻を拾い、指の間に挟んで笛にした。その笛は、松林で陣取りをするときに、味方への合図に使った。
 潮が満ちてくると波打ち際に砂で城を作った。どれだけ大きく作っても、波で少しずつ砕け、すぐ後ろにまた別な城を作ることになる。飽きることなく、波と砂で遊んだ。
 日が沈むときは、ひときわ大きく輝く太陽が眩しかった。海の向こうには甑島が横たわり、その向こうは果てしない海だ。
 流れ着いたガラス瓶を流木の上に並べ、西武のガンマンよろしく石を投げ命中を競ったこともある。割れたガラスでしょっちゅう足を切ったのも自業自得だ。
 母は、波に寄せられてすぐ砂に潜るナミノコガイ採りがめっぽう好きだった。潜り切れず、砂に立ったやつを波をよけながら拾っていく。ナンゲと呼ぶその貝は、30分もすれば、袋一杯になった。
 そういえば、母の弟は、50歳の時吹上浜沖にタコ採りに行ったまま帰ってこなかった。舟が壊れ、遭難したのだ。
 父は、梅雨が明けるとキス釣りだ。干潮の川口でゴカイを掘り、潮が満ちてくると岸に寄ってくるキスを狙う。盛期には浜辺に数メートルおきに釣り人が並び、それでも、2、3時間で100匹はものにしていた。このキスも原発のせいでほとんど消えてしまったけれど。
 父の出は日吉町、母の出は吹上町、いずれも吹上浜沿いだ。いうなれば、私は、先祖代々ずっと吹上浜を見て暮らしたその末裔だ。
 こんな話を並べたてたのも、今吹上浜に大問題が起きているのだ。吹上浜沖の洋上巨大風車群の建設計画だ。
 この計画を報じた南日本新聞には、記事の最後に「住民の不安をどう払しょくするか」と書いてあった。何の問題もないけど、無知な住民にきちんと説明しましょうネ、という意味だ。
 景観破壊が言われる。だが、海を見ながら育った身からすると、景観などという生やさしいものではない。海とともにあった先祖を含めて私たちの過去が汚され、消されようとしている。例えるならば、どの墓も花を絶やすことのない墓地で、突然墓石がなぎ倒され、糞尿を掛けられるようなものだ。
 馬鹿なことから今すぐ手を引け!体の底から憤りが湧き上がってくる。



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鹿児島市の郊外にある民家を会社にした「自然を愛する」出版社。自然や環境、鹿児島、奄美の本を作っています。

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