請求代表者 向原祥隆が意見陳述します。
最初に議員の皆さんに聞いてほしいことがあります。
十月四日、私たちは五万人の署名を携え県庁に訪れました。このとき、なんと、担当の地域政策課から裏口の通用門から署名を搬入するように要求されたのです。私たちは唖然としました。五万人の心に裏口から入れと要求したのです。こんなことがあるのでしょうか? 皆さん。
知事が重く受け止めたはずの署名、五万人の心に、知事に直接触れてほしい、私たちはそう願い、九月の頭には知事に直接受け取ってほしい旨、申し入れしました。ところが、当日現れたのは知事でも副知事でもない、部長でも課長でもない、技術補佐の方でした。
私たちはこの臨時議会の前に、知事と議会各会派に意見交換会を申し入れました。自民党の長田さん、公明党の松田さん、県民連合の福司山さん、共産党の平良さん、そして無所属の岩重さん。すぐにお返事をくださいました。あらためて感謝します。
ところが地域政策課は、先の知事の署名受け取り、この意見交換会の申し入れ、両方とも一切返事がありません。待ちかねた私たちが、直前に電話を入れてやっと回答が聞けた有様です。
県民に対する敬意が、みじんもない。本当に驚きました。
本日、知事は、公約に掲げた県民投票に否定的な意見を発言されました。知事は二〇二〇年の知事選挙で「県民の意向を把握するために、必要に応じて県民投票を実施する」と公約し、当選しました。ところが、去年の十二月、専門委の意見が集約できない場合、県民投票を実施すると変えました。県民の意向把握と専門委の意見集約とは次元が違います。後からの、すり替え、です。
そして最終的に本日、公約に掲げた県民投票に否定的な発言。明らかな公約違反です。これは先の地域政策課の対応とつながるものです。県民に対する爪の先ほどの思い、敬意がないから、公約を破っても平然としていられるのです。
県民に対する約束、百三十万人有権者に対する約束を破った。知事は県民を騙して職を得たことになる。私の多くの知人が、県民投票の言葉を信じて投票しています。この県民をないがしろにする行為を、県議会は放置していいんでしょうか? 放置することは同調したことを意味します。議会も、きちんと筋を通してほしい、そう願います。
原発には様々な問題があります。今日は二点だけ申し上げます。
二〇一一年の東日本大震災で、ついに福島第一原発が爆発しました。一度あったことは、二度目もある。当たり前のことです。今日の知事提案でも、何回も「安全を前提に」とありましたが、福島事故以前もそうでした。このまま原発が動き続ければ、大事故は必ず起こります。起こらない理由はないからです。福島の放射能は、九割が偏西風で太平洋に飛んだ。川内原発が大事故を起こせば南九州三県は数日で壊滅します。さらに、偏西風によって九州・西日本は大規模に汚染されます。
もう一つ、川内原発の使用済み燃料です。数年のうちに敷地内のプールは満杯になります。二十年延長のわずか数年後に、この核のゴミ問題が噴出する。分かり切っているこの重大問題を、九州電力は一切明らかにしていません。
こうした数々の問題点に、寿命を超えた老朽原発は拍車をかけます。寿命を超えたペースメーカーを体に埋め込みますか?皆さん。寿命を超えた飛行機に乗りますか?原発も同様に命に係わる機械です。さらに、二十年の運転延長は、生まれたばかりの赤ん坊が二十歳になるまで拘束する大問題です。
多くの県民が署名に賛同したのは、とてつもなく危険な原発が、寿命を超え、さらに長期間運転する重大問題を、今一度立ち止まって判断したいという意志表示なのです。
以下、民主主義と原発について四項目述べます。
第一に、政策決定の構造について。危険性を主張する専門家と、安全だという事業者の双方がいたら、通常行政は安全側を選択します。だが原発の場合だけは違う。危険性を唱える専門家の意見は無視され続け、その結果、利益を追求する電力事業者のやりたい放題になってきた。全く信じられない話です。
第二に、直接請求制度について。県政は通常間接民主主義によって運営されています。だが、ここにわざわざ、地方自治法七四条として、住民の直接の政治参加を保障する条例の直接請求の制度が盛り込まれています。これは、厳しい法的要件を達成し条例が請求されたなら、それを成立させることを前提にしています。
第三に、知事と議員は主権者である県民の意志の代弁者であること。
憲法では国民主権が明示されています。県政の主権者は県民です。そして、県民投票は主権者である県民の意思であることが今回の署名で明示されました。県民の意思の代弁者である知事、議員が、県民の意思を無視して、県民投票条例に反対することは許されません。自らよって立つ選挙民の意思を無視し、ないがしろにすることになるからです。
第四に、今回の臨時県議会は、まさに我が国と鹿児島県の民主主義が問われているということ。今回初めて、県民投票によって川内原発の二十年延長について自ら選択したいと主権者である県民が意思表示しました。県民の意思を専制国家のように無視するのか、それとも主権者の意志として尊重するのか。まさに民主主義が問われているのです。
最後に申し上げます。五万人の署名が集まったわけですが、これには厳しい条件がついています。対面で、しかも二カ月という短期間。これがもっと緩やかだったらもっと多くの署名が集まったと思います。私が個別訪問した場合は八割の方が応じてくれました。単純に計算したら百万人近くが県民投票をやろうと判断をされたはずです。これは議員の皆さんの有権者です。
今回の県民投票条例の請求は、二十年延長に賛成、反対を求めるものではありません。県民投票の実施を求めるものです。県民投票をしない理由はありません。もちろん、県民投票を実施するにあたっては、賛否両論の説明会の実施などが不可欠でしょう。県民投票はもともと知事が言い出したこと。知事の〇×二者択一否定論は、いまさら何を言っているのか、と言うほかありません。
若い方も大勢署名に応じてくれました。積極的に署名を集めた若い方もいます。この若い声を否定し、無視することは鹿児島の未来を潰すことです。何を言ってもダメなんだ、そういう失望を与えます。この鹿児島の未来を若い県民と一緒に作っていくために、歴史に残る誇り高い選択を期待します。
以上をもって意見陳述を終わります。ありがとうございました。
2023.10.23臨時県議会初日朝の県庁前集会