海藻に毒がない理由・下

 

 前回の続きです。

 

 陸上の植物は、ほとんどの種が虫や動物に食べられないように毒をもっている。でも、同じ植物の海藻には毒がない。
 体に石灰質を蓄えてジャリジャリするものや、ごく一部に硫酸をもつものもいるが例外的だ。なぜ毒をもたないのか。

 

 大抵の海藻が一年のうちで2月から4月までが旬で、海辺に森のように繁茂する。だけど、5月から翌年の1月まではどこかに着床した胞子がゆっくり育っていて、肉眼ではどこにいるのかほとんど分からない。この生活史のせいだと思いついた。

 

 海の最大の捕食者は魚だが、一年のうちたった3カ月しか生えない海藻を食べる菜食主義を通そうとしたら、残りの9カ月は食べ物がないことになる。食べなければ死んでしまうのは人間も魚も一緒。プランクトンや自分より小さな魚やエビ・カニなら、年中ありつける。だから、魚たちは菜食ではなく肉食を選び、海藻は、わざわざ体に毒を蓄えなくてもいいようになったというわけ。

 

 もちろんどこの世界にも例外があって、春先の海藻が大好物のブダイなどもいる。種子島なんかでは、藻(モ)を食べるからモハミなんて名前を付けてもらったほど。その他の季節は、エビやカニ、小魚を食べる雑食性の魚なんですけどね。
 生き物の世界って不思議なことばかり。

 

 さて、いま日本中で一番注目されている生き物はヒアリではなかろうか。全米で毎年100人が刺されて死んだとか、死んでいないとか。火蟻と書くくらいだから、刺されたらさぞ痛かろう。スズメバチと同じくらい痛いとも聞いた。

 

 いま、日本中で発見が相次いでいる。女王アリも見つかったと報道された。世界的な生息域拡大の様相から、以前から日本に上陸するのも時間の問題とされていた。定着すると、人間も嫌だが、畜産業界は大打撃をこうむるという見方がある。

 

 じつは、南方新社では、7年前の2010年、「最悪外来種ヒアリとアカカミアリを日本で初めて詳細図解」と帯に謳った『アリの生態と分類』を刊行していた。ページをめくると、ヒアリのコーナーがある。働きアリ、雄アリ、女王アリまで登場する。いかにも凶暴な面構えだ。

 


 この本、いま全国から注文が相次いでいる。定価が4,500円+税と、けっこうな値段にもかかわらず、どんどん売れていく。
 大きな声では言えないが、ちょっとしたヒアリ景気だ。


海藻に毒がない理由・上

 

 『海辺を食べる図鑑』の著者として、今度は鹿児島の青年団に呼ばれた。一般参加者を入れて80人と一緒に、海に行って獲物を食べようと、県青年団の事務局が企画したのだ。

 

 一昔前、田舎の子供たちなら誰でも、海や山に行って食べ物を獲っていた。今では田舎の青年団と言えど、海や山は遠くなっているらしい。

 

 でも、80人を収容できる海なんてあるのかい。小さな磯なら小さいビナ(巻貝)まで獲り尽してしまう。

 

 これが、あるんですね。80人はおろか、500人でも1000人でも遊ばせてくれる懐の深い海辺が。

 

 思いついたのは、出水の干拓地の外側に広がる干潟。狙いはマテガイ。鍬で砂を剥いで1cmくらいの巣穴を見つけ、塩を入れたらピュッと飛び出してくる。それを手で引っ張るだけだから、子供でも年寄りでも確実に獲れる。3月からの大潮の干潮ごとに、県内各地から2000人が干潟に繰り出す。それでも獲り尽されることはない。鹿児島に唯一残された素晴らしい干潟だ。運が良ければ、日本中から姿を消しつつあるハマグリ君にも出会える。

 

 

 

 かくして6月10日、大型バス2台を連ね出水に向かった。突然、講師役の私にバスの中で何か話せという。それも、阿久根の道の駅まで1時間ときた。まあ、いいや。
 野山や海の食べ物の獲り方を思いつくまま話すことにした。南方新社では、『野草を食べる』『食べる野草と薬草』を出している。近く『毒毒植物図鑑』も出す。こういう話は得意分野だから1時間でも、2時間でもOK。

 

 陸上の植物は、虫や動物に食べられないように、大抵その種特有の毒をもっている。だけど、その植物を食べる虫もいる。アゲハはミカン科、モンシロチョウはアブラナ科、ムラサキシジミはカシ類というように、幼虫は特定の食草の毒をクリアする術を身に着けてきた。私たちの食べる野菜は、毒を少なくしようと、人間が長い時間をかけて作り出してきたものだ。食べられる野草も、その毒(アクともいう)が、体重の大きい人間には問題のないレベルであるに過ぎない。要は、どの植物も、毒をもっているということ。

 

 海藻の話もした。ほぼ100%食べられるのだ。話しながら、疑問が一つ湧いた。何で同じ植物なのに海藻は毒をもたないの? うん、実に不思議。

 

 何故だと思う? でも、後日ひらめいたんですね。海藻の生活史のせいだと。大抵の海藻は2月から4月までが旬で海辺を覆う。やがて姿を消して、5月から翌1月までは、どこかに着床した胞子が、しみじみ暮らしている。と、ここまでで紙数が尽きた。続きは次回。みんなも考えてね。


アラカブ釣り

 

 このところ寒波が来て、気温が下がり続けている。この寒さの中でも、釣り人は海に出かけていく。
 新港から与次郎に向かう海岸近くに、2軒並んだ怪しげなホテルがある。桜島の眺めは最高だろうが、すぐ下の海沿いの堤防からは、刻々と変わる波の風情も楽しめる。


 変わるだけではない。一つとして同じ波はないから見飽きることはない。波にきらめく太陽の光も、同じ輝きはない。一つとして同じ木の葉がないのと同じで、ここに人工物と決定的な違いがある。と、気になるホテルのせいで前置きが長くなった。

 

 実はこの堤防、釣りもできる一等地なのである。


 正月明け、爺さんと婆さんが釣りをしていた。テトラの間に糸を垂らす穴釣りだ。見ている間にアラカブ(和名はカサゴ)を釣り上げた。爺さんは釣り、婆さんは魚を網に入れる係だ。連携した動きはけっこう通ったことを示している。何とも微笑ましい。網の中には5匹入っていた。

 もう1匹釣り上げるまで、と見ていたら根がかりだ。どうしても針がカキやフジツボに引っかかってしまう。糸を切ってやり直し。でもこれは、上手な釣り師でも避けられないこと。


 ふと思った。ここは甲突川河口干潟の埋め立て地ではないか、その昔は、砂地だったのだ、と。堤防ぎわに置いてあるテトラの先は、今でも平坦な砂地なのだ。ウキ釣りで、テトラの向こう側を底ぎわに流せば、根がかりせずに釣れるに違いない。しかも、穴釣りは干潮に限るが、ウキ釣りなら干満を問わない。


 こうして次の週に、早速挑戦することにした。が、寒い。最強の寒波だ。迷った挙句、現場到着は日暮前の4時半過ぎになってしまった。

 仕掛けは穴釣りと同じ。ただ、ウキをつけるだけ。最初にするのは、餌がアラカブのいる底付近を流れるように、ウキ下を調整すること。ウキ下を徐々に深くしていき、ウキが寝たらオモリが底に着いた印。底から20センチに餌が流れるように調整する。

 

 

 スーパーで買った150円のキビナゴを半分に切って餌にする。第1投。餌が底に着いた瞬間、ウキが沈んだ。ゆっくりリールを巻いて、先ず1匹目をゲット。餌をつけて第2投。すぐに食いついてくる。外れなし、入れ食いだ。こうしてものの1時間で10匹釣り上げた。

 

 

 


 アラカブの味噌汁は絶品だ。刺身も、コリコリしてイケル。とても食べきれないから残りは冷凍して煮付けにしよう。1時間で10匹だから、3時間で30匹、5時間頑張れば50匹だ。無限に釣れる。こりゃあ、たまらん。

 

   

 

 

 



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鹿児島市の郊外にある民家を会社にした「自然を愛する」出版社。自然や環境、鹿児島、奄美の本を作っています。

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