川内原発再稼働のその日

 
■午前6時5分、正面ゲートを封鎖

 8月11日、午前10時30分、再稼働のスイッチが押されたその時、私たち5人は警察に拘束されていた。拘束といっても手足の自由を奪われていたわけではない。
 正面ゲートから1kmのところで、私たち5台の車は、それぞれの前後を警察車両にびっしり挟まれ、動けなくなっていた。「とにかく再稼動されるまで、こいつらを見張っておけ」といったところか。仕方がないから、私たちは車を離れ、木陰で10時30分を迎えたというわけだ。
 ことの経緯を記そう。
 私たち有志、5台の車は、午前6時5分、川内原発正面ゲートを封鎖した。
 川内原発の正面ゲート前の県道は、ほとんど車の通りはないとはいえ、周辺の集落から市街地へ向かう生活道路である。私たちは片側1車線(上下2車線)の車の通行を確保するため、ゲート前ぎりぎりに1列に並んで横付けした。2列並べれば、バリケードは強固になるのだが、通行確保を優先して1列にとどめた。
 これに対して警察は慌てふためいて、正面ゲート手前2kmから、ゲートの先まで県道を完全に封鎖(通行止め)する行動に出た。
 午前7時から予定されていたゲート前集会の参加者は、2kmの道のりを歩いて行かなければならない。集会の中心におかれるはずの街宣車も2km手前に留め置かれた。
 午前6時5分から、およそ4時間が経過した午前10時、私たちは正面ゲート封鎖を自ら解いて、白バイに先導されて正面ゲートを後にした。10時半の再稼働を前に、抗議集会を成立させるためだ。
 自ら解いたのだから、すぐに無罪放免と思いきや、冒頭のような状態に置かれたのである。


■灼熱の車内

 一つ誤算があった。それは私の車が普段農作業で使う、冷房のきかない軽トラだったということ。いつも窓を開けて乗るので冷房なんかつけたことがなかった。
 先頭車両の私を含め、前3台はすぐに警官に取り囲まれたので外には出られない。外に引きずり出されるかもしれないから窓も開けられない。室温50度、といったところか。拭っても拭っても汗は噴き出てくる。水は十分にあったけれども、飲んだ端からすぐ汗になる感じだ。軽トラの床には水たまりならぬ汗たまりができていた。
 携帯で連絡を取ったら、前3台の軽トラが、冷房なしの似たような状況だった。まるで我慢大会だと笑った。
 2時間経って、初めて気がつく人がいた。わずかに開けた窓からアイスノンの差し入れ。なんとありがたかったことか。やがて、氷と冷えた水の差し入れが届くようになった。これなら24時間でも48時間でも頑張れると思ったものだ。
 結局、再稼働のスイッチが押された後に下された私たちの処置は、それぞれ駐車違反1万円。乗車していたら停車であって、駐車じゃないんじゃないの?と思ったが、10分以上なら駐車らしい。
 切符を切るとき警察官が「本当にすいませんねえ向原さん。よく頑張ったですねえ」とにこやかに語りかけてきた。ん、なんで名前知ってるの?と顔をよく見たら、自宅の4軒隣のご近所さんだった。世間は狭いものだ。


■第一の批判対象はだれか

 もう一つ触れておきたい。今回のゲート封鎖に伴い、警察が過剰に反応し、県道を全面的に通行止め(封鎖)にした。
 当然一部住民からは反発が起こる。何も知らされず、汗をかきかき、てくてく歩く羽目になった一部反対派からも不満が出る。警察がこうした分断を狙ったとは到底思えないが、良識を装う一部マスコミから、予想通りというべきか、後から「やりすぎ」との批判記事が出た。
 私たち3.11実行委は「再稼働は生存権を脅かす、とてつもない非道な行為であり、非暴力である限り、誰が何をするにしても許容する。3.11実行委の主催する行為が阻害された場合は、その限りではない。もちろん、個人が止めろという権利はある」ということを申し合わせていた。
 有志5台によるゲート封鎖は、当然その範囲であった。
 いずれにせよ、批判されるべき第一は憲法で保障された国民の生存権を脅かす行為を強行した国と九電である。憲法保障という言葉がある。憲法で保障された自由や権利が侵害される事態に陥ったとき、国民は憲法を守るために抵抗する権利がある、というもの。道交法など些細なものなのである。


■国と九電は追い込まれている

 県内の約100団体で組織する3.11実行委は8月7日から11日まで5日間の連続行動を実施した。中でも8月9日、川内原発のすぐ足もと久見崎海岸で開催された現地集会は、あとからあとから人がとめどなく集まる大集会となった。
 連日の強烈な日差し、砂浜での開催となればその暑さも想像できよう。そこからゲート前までのデモも予定されている。さらには川内駅からタクシーなら4000円かかるという、辺鄙な場所。そこに実数で2000人もの人が集まったのだ。
 全国から寄せていただいたゲート前基金によって、仮設トイレ20基、川内駅・駐車スペースから海岸までのシャトルバス10台、県下各地からの貸し切りバス20台。トイレシャトル、医療車なども確保できた。厚く感謝する。
 国や電力にとって都合のいい再稼働は、国民があきらめて声も行動も何もない穏やかな中で、こっそり実施することである。
 しかし今回、多くの人が実際に川内のゲート前に足を運び、再稼働に反対の意思を示した。参加した人の後ろには、再稼働に反対する大多数の国民、県民がついていることも示すことができたといえよう。
 九電は結局、8月11日のその日、ゲートからは1台の車も、一人の作業員も入構することができなかった。じつは、前日中に作業員の大半を原発敷地内に入れていたという。当日入構予定の人員については、漁船をチャーターして海から入った。
 こそこそと再稼働せざるを得ない状況に、私たちは追い込むことができた。「やるならやってみろ、それは国と九電の非道を、満天下に明らかにすることに他ならない。国と九電は自らの首を締めよ」。こういう状況をこそ、私たちは想定していた。


■10月中旬の2号機再稼働を阻止する

 九電が、この社会で経済活動を続けていくためには、社会の支持がなければならないのは当たり前だ。やがて、支持を得られない企業はこの社会から姿を消していく。
 九電は2号機の再稼働を10月中旬にもくろんでいる。加圧水型のアキレスけんと言われ、アメリカのサンオノフレ原発も廃炉に追い込まれた蒸気発生器細管。これが2号機のものはぼろぼろで、2009年、九電は交換を国に申請し、国も県も認めている。2014年度中の交換のはずだったが、しかし、いまだ交換されてはいない。
 これを再稼働するなど、自殺行為である。私たちは、2号機再稼働の阻止に歩みを移す。
 1号機が再稼動されたからといって、私たちは泣きも喚きもしない。これまで通り、原発の廃炉を目指して動き続けるだけだ。海も森も大地も私たちのものだ。九電の勝手になんかさせない。


 

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