向原先生と海に行く


 年が明けても相変わらず慌ただしいのだが、ふと、去年の今頃は青くなっていたのを思い出す。油断して仕事をさぼっていたら、売り上げが大幅に減って、会社の存続も危ないんじゃないの、と思うくらいだった。
 あわてて態勢を整えて、あれから一年、22冊の新刊を送り出した。

 2月刊行の『海辺を食べる図鑑』は順調にはけ、久々に1年のうちに1万部を刷るまでになった。調子に乗って、第2弾、増補版の刊行に向けて、せっせと海に行っては、掲載できていない貝やカニを食べている。30種は追加できただろうか。
 一番のヒットは、赤と白の紅白ナマコ。干上がった岩の上に伸びていたのだが、阿久根の磯に同行した地元育ちの松永さんが「こいつは食べてるよ!」と教えてくれた。実際、恐る恐る食べてみたら、これがまた、うまいのなんの。図鑑で見たら、アカオニナマコという、ちょっと怖い名前だったけどね。

 「海のもので、食べられないものはない」

 これは基本だが、動かないもの、動かないものを食べるものは、要注意だ。
 ナマコの仲間はたいてい海の底に無防備に転がっている。そのままなら、敵に発見されてあっという間に食い尽くされてしまう。だけど、食い尽くされないのは、たいていのナマコは毒(サポニン)を持っているから。

 もう一つ。ウミウシの仲間も、近寄らない方がいい。のろのろ動くので簡単に掴まえられるが、岩に張り付いているカイメンを食うやつがいる。カイメンの毒を体内にため込んで、身を守るというわけだ。だが、このウミウシを食べたら酷い目に合う。ここだけの話、私も、ヤマトウミウシなんていうのを食べて、1回、吐き気と下痢で酷い目にあった。
 もっとも、ウミウシの仲間でうじゃうじゃいるアメフラシは、昔から韓国や壱岐では食べているというし、かの昭和天皇も3回食べたというのは有名。あまりおいしくはないし、たくさんいるから、毒なんか持たなくていいということか。



 この『海辺を食べる図鑑』を手に取った宝島社の『田舎暮らし大募集』が昨年夏に取材に来て、「海の達人」という特集を組んだ。最近では、農文協の編集部が「向原先生と子どもの、海辺を食べる野外学習」を企画してきた。ちょうど、社員の子どもに小学生がいたから、ホイホイと応じた。この連載もこれから始まる。
 これで大手を振って海に行けるというものだ。でも、食べ物獲りに行くのが学習だなんて、それだけみんな海から遠ざかっているということだね。

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鹿児島市の郊外にある民家を会社にした「自然を愛する」出版社。自然や環境、鹿児島、奄美の本を作っています。

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