モグラ戦記

 
 6月19日、田植えが終わった次の日曜日。この日はわが田んぼの合鴨君のための網張の日と決めていた。合鴨君が逃走しないように、田んぼの周囲をぐるっと網で囲うわけだ。
 平日は仕事が山と溜まっているから、呑気に田んぼに行くわけにはいかない。スタッフにばれたら、「仕事もせんで」と冷たい視線を投げられる。

 

 雨天決行。だが、早朝から大雨。おまけにゴロゴロ雷も鳴っている。カーボン製の支柱は雷を呼びやすいとビビったが、田んぼは谷間にある。まあ大丈夫だろう。というわけで、9時過ぎに田んぼに到着。


 日置や長島で時間80ミリを記録した大雨だ。溢れているんじゃないかと心配したが、パッと見る限り無事だ。排水口を除くと勢いよく水が流れていた。でも、ちょっと腑に落ちない。これだけ? ひょっとすると、と心配になって畦を細かく踏み続けている内にズボッ。空洞だ。露わになった洞に水がガンガン噴き出ている。やはり、水の出口は排水口だけではなかった。

 

 田んぼの水位が上がって、モグラの穴から入った水がどんどん土を洗いながら畦の反対側に流れ出ていた。穴の入り口は無事で、出口側から土が流れ出て空洞になっている。ほう、こうして崩れるのね、なんて感心している場合じゃない。


 慌てて、会社の隣の町内会長さんに助けを求めた。
 「土嚢袋、いくつか下さいな」
 モグラ穴の入り口を足で踏み固めて水を止めた後、空洞に土嚢を積む。よろよろしながら運んだ土嚢は8袋にもなった。
 あと、1時間発見が遅れていたら畦は決壊し、田んぼはむちゃくちゃになっていたに違いない。ほーっ。


 もう一つ幸運が重なった。用水路から水が来ていなかったのだ。ずっと上流で土砂崩れがあり、おかげで、こっちの田んぼへの水の取り入れ口が土砂で埋まり塞がっていた。
 大雨とともに用水路からも水が来ていたら、田んぼは溢れていたに違いない。越水も畦崩壊の呼び水になる。全く運がよかった。


 こうして午前中は畦の修理にすっかり時間をとられ、午後から網張と相成った。
 ここで、問題がまた一つ。上の田んぼの崖から、水が噴き出ているのを発見。またまた慌てて上の田んぼのモグラ穴を潰し、排水口の水の出を最大にした。


 モグラは生きるために懸命に穴を掘り、人間も生きるためにこれまた懸命に穴を潰して回る。この営みは、ずっと昔から続いてきたし、これからも続くんだね。

 

  

 

 


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鹿児島市の郊外にある民家を会社にした「自然を愛する」出版社。自然や環境、鹿児島、奄美の本を作っています。

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