植物大図鑑

 

 84歳の植物研究家の本を作っている。南方新社、久々の大型企画である。


 今ではかなり高齢の彼がまだまだ若かったころ、45歳からコツコツと植物画を描き始めた。それは自分のためだったという。


 図鑑を見ても、似た種との区別点はなかなか分からない。せっかく専門家に聞いてもすぐ忘れてしまう。ならば、自分ですぐ分かるようにと、写真では見えない複雑な部分、小さいところ、細かな毛、薄い膜、透明な膜まで、自分で絵に描き込んでいった。まさに細密画だ。


 一つの形になったのは、描き始めてから7年後、52歳のとき。描きためた海辺の植物をまとめて出版した。日本の植物学の権威で、植物に少しでも関心のある人なら知らない人はいない故・初島住彦博士(鹿児島大学名誉教授)が、植物画を目にして絶賛した。

 

 「図鑑の写真は花や実にピントを合わせているので、花や実のない場合は分かりにくい。その点、線画のものが最も分かりやすい」「まことに喜びにたえない」と推薦文まで寄せてくれたのだ。

 それから32年。初島博士の言葉を励みに、84歳になるまで描いた植物細密画は1502種に達した。


 南方新社から何冊も植物図鑑や野草、薬草の本を出している川原勝征さんがこのことを知り、1冊にまとめて出すべきだと、ドサッと原稿を一式置いて行かれた。

 よし、出そう。即決した。


 図鑑や辞典は完全なものほどいい、というのが私の持論である。たとえば小学校の図書館。小学生相手だから、簡単な小学生向きの国語辞典や、小学生昆虫図鑑でいいと大抵の人は思う。実のところ、これはほとんど使い物にならない。大幅に間引いてあるから、調べようと思って探しても載っていないのだ。

 

 私は奄美・徳之島の伊仙小学校を卒業した。蝶を採集していたが、当時の日本の図鑑に載っていないものがほとんどだった。日本の図鑑は使い物にならないと子どもでも分かった。ところが、伊仙小学校の図書館には、何万円もする台湾蝶類図鑑があった。その図鑑には、島の蝶は残らず記載されていた。大人になってから、なんて素晴らしい図書の先生がいたのだ、と何回も振り返った。

 

 1502種。どの九州産植物図鑑よりも網羅性が高く、完全版といっていい。九州中のすべての小学校に置いてほしい。もちろん、小学校に限らず全図書館、全家庭に常備してほしい。図鑑は古くなることはない。半永久的に、ずっと最高の知恵袋であり続ける。
原稿を受け取ってから半年、まだ校正の途中である。刊行までにあと半年はかかる。

 

 3月1日から購入予約の受付を開始する。上下巻1400ページ、1万9440円を予約特価1万5120円。平田浩著『図解 九州の植物』上下巻だ。

 (呈カタログ・電話099-248-5455, info@nanpou.com 南方新社)

 

 

 

 

 


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鹿児島市の郊外にある民家を会社にした「自然を愛する」出版社。自然や環境、鹿児島、奄美の本を作っています。

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