頑張れ紫尾山

 

 11月9日、1時間かけて、のこのこ宮之城まで出かけた。北薩の最高峰、紫尾山(1067m)に計画されている大規模風力発電のシンポジウムが開かれたからだ。

 

 紫尾山の頂上部を除く尾根筋全域に巨大風車が165基、これまでの日本最大の風力発電の7倍、60万kwというから、原発並みの発電施設になる。

 半年ほど前から聞いていたが、深く考えることはなかった。この日、2時間、じっくり資料に目を通し話を聞くうちに、こりゃすごいと、唸った。

 

 20kmも届くという超低周波音。牛、豚、鶏は餌を食わず、乳も出さず、卵も産まなくなるという畜産被害が想定される。もちろん人間にも影響が出る。特に子供が心配だ。

 

 風車に向かって飛んで行ったワシが一瞬のうちにグシャッと風車の羽根で叩き落とされる映像が流れた。北海道で撮影された映像だ。思わず、ワッと声を上げた。バードストライクというやつだ。聞くと見るとでは大違い。実にたまげた。今回の協賛団体である野鳥の会が反対の声を上げるのも、もっともなことだ。

 

 何より私の脳裏をよぎったのは、紫尾山の昆虫、植物が壊滅的な打撃を受けるということだ。計画されている風車は、鹿児島中央駅の観覧車アミュランの2倍の直径120m、高さも2倍の180mになるという。羽根一枚の長さは60m、柱は90mだ。一体どうやって運ぶのか。

 

 紫尾の尾根筋には林道が走っているが、それはせいぜい5m前後に伐った木材をトラックで運ぶための道だ。山肌に沿って急カーブが連続する林道で、60mの羽根や90mの柱はとても運べない。山を削り谷を埋めた直線の道じゃなければ無理というもの。

 

 かくして紫尾山の尾根沿いの森は大規模な伐採と、土地改変が行われることになる。

 地球は、1万年少し前の最終氷期から徐々に温暖化している。それにつれて、最終氷期の前に進出した北方系の生き物たちは少しずつ北に追いやられてきた。鹿児島では、紫尾山、霧島山、高隈山の尾根筋に生き残ることになる。

 つまり、学術的にも貴重な日本の生物の南限種群が、一瞬のうちに壊滅する危機に立たされているというわけだ。

 

 だが、この事実はほとんど知らされていない。鹿児島大学の生物の教員に「こんなことがあるよ」と話したが、「全然知らなかった」と驚いていた。

 原発もダメだが、再エネという美名に隠れた大規模風力発電も、やめておけと言うほかない。まさに度を越した自然破壊の元凶だ。


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鹿児島市の郊外にある民家を会社にした「自然を愛する」出版社。自然や環境、鹿児島、奄美の本を作っています。

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