2012.7.20〜2012.12.18

 2012.12.18 初冬の彩り

 先週、鹿児島にも初霜が降りた。
 バイク通勤の私は、田んぼ沿いの道を走って会社に通っている。田んぼや畦が真っ白に染まるこの季節は、なんともすがすがしい。陽の差すところからは、白い蒸気が舞い上がっている。
 バイクを停めて畦を覗くと、スギナの細い葉っぱを幾粒もの小さな氷がびっしりと覆っている。宝石のようにキラキラ輝いて、それは美しい。夜露がそのまま凍ったのだろうか。
 少し走ると、タヒバリがピーッと鳴いて慌てて飛び去っていく。山道に入ると、こんどはシロハラが両側だけ白い尾っぽを見せて、林の中にバタバタと消えていった。毎年決まってこの時期を賑わしてくれる鳥たちが、今年も忘れずに来てくれた。
 椎の木の常緑の森をふちどるのは、イヌビアの黄色い葉っぱ。シラス崖には、やはりアオモジの黄色がまるで花束のように明かりを灯す。赤いアクセントはハゼの葉っぱだ。
 この冬一番の寒さを更新する初冬の日々だが、よく目を凝らすと一年中で最も彩りの豊かな季節なのだと気が付く。
 1216日、衆院選の投票を終えて、田んぼに立った。借りている田んぼの畦の草刈りだ。
 一年間お世話になった田んぼだから正月前にきれいにしておかねば、おさまりが悪い。冬枯れの畦だからそう見苦しくもないのだが、ところどころに残るカヤの穂なんかをきれいに刈れば、さっぱりなる。
 草刈り機で刈りながら、モグラの穴や、畦の細くなったところもマークできる。来年の田植え前に修理しておかねば。
 世間は自民党大勝利で騒々しい。選挙前に続いた竹島、尖閣問題、北朝鮮のミサイル。なにやらCIAの謀略の匂いフンプンなのだが、人々はそんなことはお構いなしに、戦争好きな方になびいた。
 希望は、変な話だが投票率が低かったということ。決して大多数の人が、国防軍に熱狂しているわけではない、というのは救いである。
 今日、社屋の修理に来てくれた自民党支持の建設会社の社長が、「原発だけはいかん。私は責任のとれない仕事はしない。原発は後始末ができないし、責任も取れない」と語った。自民支持イコール原発推進でもないのだ。
 ともあれ、世間の騒ぎをよそに、落ち着いた気分で草刈りをしながら、正月を迎えるのも悪くない。
 次は会社の草刈り、墓掃除と門松作り、最後に鶏小屋にいるカモを絞めて、正月準備は完了する。

 2012.11.22 秋の月

 昨夜、1119日、仕事が一段落して帰ろうと事務所を出ると、庭の西側にそびえるタブの木の上に、きれいな三日月がオレンジ色に輝いていた。
 事務所のある下田町は天文館から車で15分なのだが、周りには田園地帯が広がる。その丘陵部にある事務所には街灯の光は届かない。
 星や月を仰ぎ見て帰るのが楽しみの一つになっている。外に出て、事務所の電灯を消せば一瞬の闇となる。しかし、目が慣れれば単車置き場までは何のことはない。少しの月や星で十分なのである。
 満月の夜は、本でも読めるのではないかと思えるくらい明るい。厚い雲で覆われた小雨のぱらつく夜でも、その日が満月なら十分明るいことにも気が付いた。本当の漆黒の闇は、新月の雨模様の夜だけなのだ。さすがにこんな夜は、つま先をそろりそろりと前に突き出しながら歩かざるを得ない。逆に新月の晴れた夜は、満天の星に息をのむ。
 こんな夜の楽しみは、灯りに馴らされ、おまけに狭い空しか持ち合わせない街なかの連中には味わえまい。フッフッフー。
 月と言えば、最近分かったウナギの生態にも大きく関わっていた。ウナギがどこで産卵するかは長年の謎だったが、日本の2500km南、マリアナ海嶺スルガ海山だと分かった。初めて卵を捕獲して場所を確定できたのが、大潮の日だったのだ。
 大潮は満月か新月の日で、月の引力によって潮の干満の差が最も大きくなる。潮の流れも加速する。ウナギは、稚魚の餌になるプランクトンの死骸が溜まるあたりに雌と雄が集まり一斉に産卵、放精する。海中でうまく受精するためには、潮の流れの速い方が有利なのだと推論されている。
 そういえば、弁慶ガニなど陸域に棲息するカニも大潮の夜に海に出て産卵していた。奄美でスクガラスという塩漬けの材料にする小魚も、岸に寄るのは大潮だった。人間の出産も潮の満ち干が関係していると聞いたことがある。
 こう見ると、生き物にとって月はとてつもなく重要なのだと予感できる。自然から離れてしまった普段の私たちは、月の有り難さを知らない。
 今作っている正月向けの商品に、『奄美ことわざカルタ』がある。
 奄美の島々で、古来より子や孫へと伝えられてきたことわざ。そこには、日本本土とは異なる自然観や、先人の教え、知恵が凝縮されている。
 「て」の札に「太陽(てぃだ)とぅ月(つぃき)や 生(い)きむんぬ親(うや)」があった。あらためて先人の偉大さに頭が下がる。

 2012.10.22 100人の母たち

 選挙突入から、お礼のあいさつ回りなどの後始末までの間、5月から8月までの4カ月間、仕事をさぼっていたおかげで新刊が2冊だった。通常のペースなら10冊出していなければならないのに、である。売り上げはもちろん激減。
 いま、遅れを取り戻すためにフルスピードで走っている。
 選挙をきっかけに出すようになった本もある。3.11事故を機に原発問題と直面せざるを得なくなった母たち100人のポートレートとメッセージで構成される『100人の母たち』だ。
 選挙応援に福岡からも大勢駆けつけてくれた。その中心が「ママは原発いりません」というグループだった。著者となるカメラマン亀山ののこさんは、そのメンバーの一人だった。本の話を受けたとき、ののこ、という名にピンと来た。ご両親は「野の子になれ」という願い込めて名づけたのだと。いい写真でないはずがない。
 果たして写真を見て息が詰まった。子を抱く母親の何と神々しいことか。自分が子どもの頃の母親の温かさを思い出した。わが娘の幼かった当時を思い出した。娘と孫の情景や、まだ見ぬ孫の子も想像させられた。
 この子どもたちの将来を守りたいというピュアな気持ちがまっすぐに届いてくる。
 写真集を、文章で説明するほどまどろっこしいものはないのだが、添えられたメッセージを紹介しよう。

 わたしのいのちの子。/しわしわで赤いあなたを/はじめてこの胸に抱いたあの日を/わたしは忘れません。/
 こわごわとうけとめたあの日を/わたしは忘れません。/わたしと同じ/エクボをもって産まれてきた/小さなあなた。/
 あなたはわたしで、わたしはあなた。/あなたの未来は、わたしの未来。/あなたのために、わたしのために。/輝く未来をこの手にひきよせるため/母として わたしは立ち向かう。/放射能や原発に。/ごまかしや嘘に。/ぬるま湯のここちよさや、/考えない気楽さに。あきらめや絶望に。/それはわたしの中にあるものです。/母はよわく頼りないのですが/心配はいりません。/わたしには いのちの絆で結ばれた/仲間がたくさんいるのです。/そして うつくしいあなたの笑顔が、/無限の力を与えてくれるから。/
 ありがとう。わたしのいのちの子。/母はよわく頼りないのですが、/誰よりもあなたを 愛しています。

 11月上旬にはお目見えする。定価は税込1,890円。乞うご期待。

 2012.9.20 保育士の卵たち

 すっかり穂の垂れ始めたわが田んぼに、今でも毎朝アイガモの餌やりに通っている。「今でも」というのがミソなのだ。
 普通、出穂から1週間くらいでカモは田んぼから引き上げる。そうしなければ稔った米をカモが食べてしまうのだ。昔、スズメを捕っていたように餌をまいてワナにおびき寄せた。これまで何の問題もなく捕れていたのだが、今年は一旦ワナに入った9羽のうちの1羽が再び田んぼに逃げ出してしまった。彼は、自分がつかまる恐怖を味わい、おまけに仲間たちの囚われていく断末魔の叫びを耳にした。
 別な仕掛けも準備したが全く相手にされない。人間不信に陥ってしまったようだ。こうなればカモ捕り権兵衛もすっかりお手上げ。あとは毎朝餌をやって、出来るだけコメを食べないように仕向けるほかない。
 カモとの知恵比べというしみじみとした日常に、黄色い歓声が響き渡った。9月上旬、千葉から保育士の卵たち8人が、先生とともにやってきた。ひょんな縁で昨年から卵たちが来るようになった。何の役に立つのかさっぱり分からないが、保育研修の一環だという。
 一日目は、川内原発を案内し、橋口さん宅でアイガモの解体をやった。会社に雑魚寝をしてもらって、翌日は釣り体験だ。
 昨年、付近の山で釣り竿になる竹を切っていたら、山の主が突然現れ、しこたま怒られた。卵たちの前だから、格好悪いのなんの。鹿児島の田舎では、子どもの頃から釣り竿の竹はそこらの山で切るものだと決まっていた。友達を含めて何百人も同じことをしていたと思うが、怒られたというのは聞いたことがない。
 山の持ち主も、そのまた親も、ずっと子どもの頃、山で遊び回っていたから気にも留めなかったのだろう。だいたい山が誰の持ちものか、考えたこともなかった。それだけ世の中がせせこましくなったということか。ともあれ、今年は怒られないように、釣り竿はちゃんと準備をしておいた。
 ソーセージを餌に糸を垂らすと、面白いようにカワムツが掛った。「食べられますか?」と聞かれ、たじろいだ。川には農薬や生活廃水が流れ込んでいるからだ。
 だが考えてみれば、同じ川の水を取り入れた田んぼで米が稔っている。その米を人間が食う。魚をニワトリにやったところで卵や肉を人間が食う。川の水は海に流れ込んでいる。その海の魚も人間が食う。カワムツも同じ。
 山尾三省が、日本中の水を飲めるようにという遺言を残した。でなければ、人間は汚染されていくほかないのだ。

 2012.8.20 喜びの出穂

 今日8月20日、出穂。
 わがアイガモの田んぼに、やっと稲穂が見え始めた。6月から7月にかけての連日の雨で日照が不足したのか、昨年より数日は遅いようだ。明日には白い雄しべが姿を見せるに違いない。とっても地味だけど、稲のお花畑だ。
 3週間ほど前には、コブノメイガの幼虫が大繁殖していた。稲の葉を巻いて、その中に潜んで葉の表面だけを舐めるように食べる害虫だ。巣になった葉は枯れてしまうから、さあ大変。
 と思いきや、止め葉がやられない限りは、何の問題もないという。止め葉? これも初めて聞いたのだが、稲の茎はストロー状で、ストローの一番上の端っこに出るのを止め葉というらしい。止め葉が出て、ストローの中から稲穂が伸びてくるのだ。ふむふむ、また一つ勉強になった。
 止め葉が出るずっと前の葉っぱをコブノメイガがのんびり食べているあいだに、あとからあとから葉っぱが伸びてくるものだから、枯れ葉だらけで白っぽく見えた田んぼは、いつの間にか緑の田んぼに色を変えていた。もう大丈夫。
 害虫を食べてくれるはずのアイガモがいるのに何で?と思われる人もいるかもしれない。虫は巻いた葉っぱの中に潜むからアイガモちゃんも歯が立たない、というか、くちばしが立たないのですね。そのかわり、今ほとんどの田んぼに見られ、秋にかけて大発生が心配されているウンカ(秋虫)は、せっせと食べてくれる。
 さて、コブノメイガの下の名前のメイガ。米につくから米蛾。ずっと前からそう思っていたが、これは間違いだった。メイガのメイは、螟と書いて稲に限らず、植物の芯を食べる蛾の仲間の意味だという。
 コブノメイガは芯を食べないのだけど、同じ仲間(科)だから目をつぶらざるを得ない。
 毎日通う田んぼも、いろいろ勉強になる。

 今でも、ときどき肩がズキッと痛む。選挙の後遺症だ。助手席から窓側の腕を出して、ずっと振り続けていたから痛んだようだ。ためしにキミも、助手席に座ったつもりになって手を振ってみたらいい。肩が開く不自然な姿勢だということが分かるでしょう。
 天皇とか皇后さまが車から手を振っているのを目にすることがあるが、窓側の手ではなく、体をぐっと回して内側の手を振っているに違いない。今度確かめてみよう。
 投票日から2週間、ずっと見続けていた選挙の夢も見なくなった。ズキッとくる肩の痛みも頻度が少なくなってきた。日常が戻りつつある。

 2012.7.20 怒涛の県知事選挙

 現職の伊藤知事が再選されたら川内原発の再稼働は確実。みすみす指をくわえて見ているわけにはいかない。
 出ると決めたのが連休明けだから2カ月。動き出して1カ月半の超短期決戦。態勢もなかなか固まらない。フル稼働したのは実質3週間くらいだろうか。
 悪気はないのだろうが、様々なところからアドバイスが集中した。いちいち聞いていたら身が持たない。一番困ったのは、ボロ負けしたら全国の反原発運動にダメージを与える、と心配する言葉、というか出るなという忠告? もっともらしい物言いだから困りものだった。所詮高見の評論家の言と、聞き捨てることにした。
 ついでに、内部の会議にも全て欠席することにした。昼間フルに動き回って体がへとへとになり、おまけに夜の会議で頭までへとへとになれば、投票日前に終わってしまう。実際うつ状態になった候補者も多いという。何とかこれは免れた。
 選挙事務所のスタッフには、肉体的にも精神的にも負担をかけたが、その分、極力文句を言わないで言われたとおりにすることを心がけた。
 佳境に入った17日の選挙期間も後半。候補者は、繋がれた犬のようなものだと認識した。
 選挙カーのルート、街頭演説の場所も時間も全てスケジュール化されている。ミニ集会や大きめの立会演説会もある。おおまかなルートは知らされるものの、細かい点は直前確認となる。
 「エーと、ここでは何分しゃべるんだっけ」。5分。「はいはい」。ここでは1時間。「げっ、ちょっと構成を考えなきゃ」。てなもんで、こっちへ行って「ワン」、あっちでは「キャン」、集会では「ワン、キャン、ワン、キャン」。天文館の練り歩きなんかが入れられた日には、道の左右の店に客を求めて動くもんだから、まるでサッカーボール。
 そんなこんなで駆け抜けてきたが、私がいないところでも、県内各地でボランティアが「さよなら原発」「78投票日」なんかのポスターを手に辻立ちしてくれていた。各地での電話かけやら、一体、何百人何千人の人たちが動いてくれたことだろうか。
 直接選挙とは関係ないのだが、2000人のUAコンサートも若い衆がやってのけた。
 向原祥隆200,518、伊藤祐一郎394,170
 負けはしたけど多くの人が反原発で立ち上がった。かつての一揆は、一味ことごとく殺されていたが、この世は命まで取られることはない。フツフツとマグマをたぎらせ、再度爆発のときを待とう。


2012.2.16〜2012.5.21


 2012.5.21 県知事選出馬表明

 7月に知事選がある。誰か出てくれないかな―。誰かいないのかなー。そう思っているうちに4月も中盤になった。
 おいおい、こりゃ、まずいよ、伊藤知事が再選されたら、すべて止まっている原発の再稼働一番目に川内がなってしまう。というわけで、反原発・かごしまネットの総力を上げて、候補者探しに突入した。と言ってもそんなにあてがあるわけでもない。何人かに当たって木っ端みじんに断られ、残るは向原本人しかいない、ということに。
 後先考えずに、無謀な挑戦と相成った。5月連休明けから始動、最初の躓きもあって、やっと5月22日に出馬表明。以下にマスコミに配布した声明文から。
 ――私は1992年、東京からUターンして36歳で図書出版南方新社を創業し、出版活動によって、もっと心豊かで住みよいふるさと鹿児島にしようと努力してきました。同時に、県民のいのちを守り、この豊かな自然を未来の子どもたちに残すために、反原発運動に携わってきました。
 2011年3月11日の大地震を契機にした福島第一原発の爆発事故は、あらためて、原発の脅威を明らかにしました。西日本の原発で事故が起これば、立地県はもとより近隣県、さらに偏西風によって広く日本全土が汚染され、国家の滅亡にいたる危険性さえも明示されたのです。
 選挙を前に伊藤知事は「脱原発」を表明しました。これは、福島第一原発事故による被害のあまりの大きさに、県民の中に、原発そのものについての疑問や不安が広がり、「原発をなくそう」という声の高まりに、知事としても「脱原発」を表明せざるを得なくなったものと言えます。しかし、同時に、脱原発社会の実現まで短く見積もって30年かかるとも発言しています。一旦自身で受け入れた川内原発3号機増設の白紙撤回さえ、これまで九州電力に申し入れていません。伊藤知事の川内原発に対する姿勢は、これから30年間県民を危険にさらそうとするものであり、県民のいのちと、子どもたちの未来を守るという立場からは、到底、容認できるものではありません。
 今回の鹿児島県知事選挙は、日本の原発が全停止して以降初めての原発立地県の知事選挙です。日本が地方から脱原発を実現する、まさに歴史的な選挙となるのです。(略)
 最後に、これまで知事選で原発が争点になることはありませんでした。今回初めて、県民が自ら原発について意思表示が出来るのです。全ての県民の皆様に、棄権することなく、投票していただきたいと思います。――

 2012.4.17 連作障害

 春が来た。気持ちの良い畑仕事の季節だ。
 ナス、トマト、ジャガイモなどのナス科、枝豆やインゲンなどのマメ科は、毎年続けて植えたらダメ。3、4年は違う作物にして、時間を空けなければならないと橋口さんに教わった。連作障害が出てうまくいかないらしい。
 作物によって悪さをする病原菌は違う。今年その病原菌が悪さをしない範囲で繁殖したとしよう。翌年も同じ作物を植えたら、その病原菌はかなりの部分が土の中に居座っているから、今年以上に勢力を伸ばす。こりゃ大変だ。みんな病気になってしまう、っていうのが連作障害ってわけだ。うん、勉強になった。
 今日は4月17日、晴れ。通勤の途中に通る谷あいの田んぼでは、れんげ草がちょうど真っ盛り。ゆるやかな坂を登っていくから、次々に新しい田んぼが目の前に現れる。れんげ草も、上から見るより、斜め横から見たほうがピンクが重なって鮮やかだ。なんてきれいなんだろう、と息をのむ。
 私が去年、合鴨農法でコメを作らせてもらった田んぼも、種をまいたわけでもないのに、れんげの園になっていた。初年落ちた種が、また芽吹いてくれたのだ。
 ん、ちょっと待てよ。れんげ草もマメ科。連作障害はどこに行ったの?
 田んぼでは連作障害の法則が通用しないらしい。
 あらためて尋ねると、水を張るから大丈夫なんだと。水を張ると田んぼの土に酸素がない状態になるから、そのとき病原菌がみんな死んでしまうんだ。なるほどね。
 れんげ草に、そんな不思議な仕組みがあったんだ。
 ここでまた別な疑問がわき上がる。マメ科といえばシロツメクサ。会社の庭にはシロツメクサがほこっている。ときどき四つ葉探しで遊ばせてくれるこの雑草の連作障害はどうなっているのだろうか。
 作物に連作障害があって、雑草にないということは考えにくい。同じ場所でほこっているように見えて、実は少しずつ勢力図を動かして、連作障害を避けているのだろうか。それとも、何か別の仕組みがあるのだろうか。
 とりあえずは、シロツメクサの群落に、ひもで印を付けておけば、群落の移動は確認できる。小学校の自由研究みたいだけど、やってみよう。
 ところで、南方新社では植物図鑑をいろいろ作っている。三月には野山の脇役中の脇役、蔓植物の図鑑を刊行した。著者の川原さんの次作は、植物遊びの本。シロツメクサの花飾りが図鑑にも登場します。本を見ながら作ってみませんか。

 2012.3.15 列島汚染は謀略か

 国が震災ガレキの受け入れ先探しに躍起になっている。315日、鹿児島県議会にも環境省の役人が説明に来た。
 放射能汚染のひどい福島のものではないから大丈夫、なわけはない。岩手や宮城のガレキにも312日に海沿いに北へ向かった放射能がこびりついている。
 その証拠に、国は燃えかすの焼却灰に最高8000Bq/kgの放射性セシウムを予想している。曰く「8000Bq以下の灰は土をかぶせて埋める」。おいおい大丈夫か?
 2005年に改正された原子炉等規制法では、セシウムが100Bq/kgあれば放射性廃棄物として厳重管理の対象となる。原発内では、100Bq/kgで厳重管理されながら、原発の外ではその80倍の汚染物が手軽に埋め立てられる。なんと不思議なことがあるものよ。
 案の定、群馬県伊勢崎市の処分場では国の基準より大幅に低い1800Bq/kgの焼却灰だったにもかかわらず、放射性セシウムが水に溶け出し、排水基準を超えた。横浜市の処分場では、今年3月の市議会で、4カ月強で1億3000Bq/kgのセシウムが横浜港に放出されていたと明らかにされた。
 埋めれば漏れる。この放射能、300年間は漏れてはならないはずだが、100%漏れていく。川や地下水に流れ込んで、やがて飲み水も失わざるを得ない。
 国は「バグフィルターがあるから、セシウムが大気中に出ることはない」ともいう。ところが、ばい煙を除去するためのこのフィルター、なかなか扱いが難しいらしい。
 1000度前後の排ガスを200度に下げねばフィルターが焼け焦げてしまう。下げすぎたら結露してがちがちに固まる。バグフィルターについて99年度に66都市から回答のあったNEDOの調査では27件の事故が起こっている(津川敬著『教えて!ガス化溶融炉』緑風出版)。
 温度がうまく下がらない場合は、高温の排ガスをフィルターを通さずバイパスから煙突に直行させている。
 いずれにせよ、煙突からセシウムが降ってくるのは避けられそうもない。
 妊婦や子どもたちの上に放射能が降る。想像もしたくない図である。
 おまけに国の計画では、広域処理の計画量はガレキの20%に過ぎない。汚染物質の拡散は海外からも批判が集まっている。
 こんなバカを、何故国は意固地になってやるのか。野田や細野がとことんアホなのか。それとも、日本列島全部を放射能汚染地帯化し、日本人を総被曝させたいどこぞの国の謀略なのか。散々悪さして、ごめんも言わぬ嫌われ者の日本だから、これもありか。

 2012.2.16 節分のお茶畑

  3月の年度末と言えば、あちこち掘っくりかえす道路工事の枕詞のようになっているけど、実は出版業界も年度末に仕事が集中することがある。
 と言うのは、単価が1万円を超える大型本なんかは学校や自治体の図書館が頼みの綱。昨年の夏に刊行すると言いながら、年末に延期し、それも反故にした「奄美諸島の諺集成」は、図書館関係からけっこう予約を貰っている。3末までに出さねば、その予約もパー。
 予約は各地の書店さんが足で稼いでくれているから、パーになれば書店さんにも大迷惑だ。900頁の本である。ふー。もう少しで頂上に着く。
 もう一つのパターンは学者さんの本。大学の研究者が本を出す場合、公的な補助金を活用して、印刷費の幾分かをまかなう場合がある。出版社にとって印刷費も回収できない本が珍しくない昨今、これはとてもありがたい話である。以前は、こんなうまい話にはほとんど縁がなかったが、今年は3件ほど集中している。
 3末までに出さなければ、この補助もパーになる。3件の内1件は、2月の中旬にもなろうと言うのに、いまだに原稿の「げ」の字もない。
 ぎりぎりになってもこんな塩梅だから、もともとこの学者の段取りの悪さはどうしようもないし、原稿のレベルも期待できたものでもない。あちこちに断られた揚句、南方新社に話が回ってきたと考えれば、話のつじつまが合うね。今更断れないし、なーんだ、単なる貧乏くじか。
 原稿をブーンと振り回して、あちこちを黙らせながら短期間に本にしなければならないような仕事は、ある程度経験がなければ無理。自然と私に集中してしまう。と言うわけで、当分、貧乏暇なし状態が続く。
 ところで、茶摘みの歌「夏も近づく八十八夜」って、いつから八十八夜か知ってる?
 そう、答えは2月の立春からなのだ。立春っていつか、ぱっと思い出せないでしょ。その前日の節分なら豆まきをするからすぐ分かる。
 この節分の頃、茶畑の刈り込みをするのが田舎人の年中行事になっている。坊主頭に刈り込んでおけば、88日後の5月の連休には若葉がきれいに生えそろう。それを、袋の着いた茶挟みで摘むというわけだ。田舎には連休中だけ稼働する茶工場がある。1年分のお茶をゲットし、後はほったらかし。そして、また節分となるわけだ。もちろん蔓を払ったり、周りの草を刈ったりはするけどね。
 2月14日、ちょっと遅れたけど、今年も茶の刈り込みが出来た。なんだか、ほっとした。
 


2011年10大ニュース&スタッフからのお便り



とりあえず 賀正 2012元旦


★ジャーン。設立19年目に突入。刊行点数350点突破。年賀に代えて近況報告。

2011年の南方新社10大ニュース

1月29日 サメベイビー誕生。うちは水族館ではないのでベイビーはもちろん人間の子。昨年11月に挙式した小社社員鮫島亮二のお子だ。なんと双子ちゃんで♂1♀1。男の子はケスイボ(やんちゃ坊)顔がサメそっくり。女の子は意外に美人で嫁さん似。ヨカッタネー
3月11日 原発本が一躍人気者に。『九州の原発』ほか5冊。ほうら言った通りじゃん。事故がなくてもガンは増え、自然は無茶苦茶なんだよ。放っとけば必ず起きるよ、第2のフクシマ
6月7日 南日本出版文化賞を受賞。小社刊『奄美民謡総覧』です。ぱちぱちぱちー。この賞、著者には賞状と賞金が授与されるが、出版社には何もない。著者の指宿正樹さんに、「賞金は山分けねっ」と軽く言ったら本当に現金書留が送られてきた。エライコッチャ
7月12日 天然ウナギ。田舎の川でエビ捕りの最中に捕獲4匹。以降ウナギ捕りにはまる。ぷりぷりした食感と濃厚なうまみは、ドヨーンとした柔らかいだけの養殖ウナギの比ではない。三越で買えば1匹5000円、川で捕れば只さ。ワッハッハッハー
8月19日 究極の魚本刊行。じゃーん『九州発 地魚を食べる』。550種のおいしい食べ方を紹介した。「ヒトデはカニみその味」とYAHOOニュースのトップで紹介。ドッカーンと注文来襲。鹿大水産学部教授の著者は、3年で1500種類の料理を食べた。あまりの魚漬けに家族には嫌われてしまったと愚痴がぽろり。センセイカワイソ
8月28日 『アンダーズ・ハイ』書籍化。表紙のイラストは、桜島噴火口から登場した怒る西郷隆盛。鹿屋自衛隊は攻撃用ヘリを全部隊出動させるも歯が立たず。西郷は、海をひとまたぎして鹿児島市街地に。「おはんら!なんしちょっとよ!」とビルを踏みつぶしていく。特集は「勝手に鹿児島改造計画」。書店で流れたPVはYouTubeでどうぞ。パオーッ
10月19日 稲刈り。今年はアイガモ農家になっていたのだ。毎朝、田んぼのカモに餌やりの後出社。台風で3分の1が倒伏。それでも8畝の田んぼで7.5俵を収穫。合鴨米クッタドー
11月11日 1カ月連続居候。この日、男1名犬1匹来社、居候がはじまる。会社の流しで3食自炊。夕刻6時過ぎには夕餉の匂いが漂い始め、ジャージャーとフライパンの音が響き渡る。ここは仕事場なんですけど……。小社にはいろんな人が泊まるが、この居候は1カ月続いた。マイッタ
12月28日 『知事との闘い』刊行。なんて直截なタイトル。中身は川内の産廃処分場建設に反対する住民の話。それにしても建設会社べったりの知事は、あんまりかも。被告伊藤祐一郎は裁判で負けるね、きっと。この本をもって、2011年の出し納めでした。カッチン、メデタシメデタシ
12月28日 沖縄タイムス出版文化賞。仕事納めのこの日、はるばる海を超えて1本の電話。『奄美沖縄環境史資料集成』が受賞だって。おーい、みんなー、やったぞー。ぱちぱちぱちー。「授賞式には来て下さいね。賞状と盾をお渡しします」。はいはい行きますよー。「交通費は出ませんけど」。がくっ。でも行くもんねー。アリガトウオキナワ


2012年も新刊目白押し。乞うご期待。


スタッフからのお便り

昨年、姪が生まれた。少し離れた所に住む姪に会えるのは、月に一度。毎回、愛用のフィルムカメラでその姿を撮りためている。
現像してみないと分からない写真の出来栄え。失敗も多いが、時に予期せぬ一枚が撮れていたりする。赤ちゃんが時折見せるふとした表情。その瞬間が撮れた時が嬉しい。
姪の写真は常に携帯。仕事で疲れた時はチラッと見る。その姿にパワーをもらいながら、今年も頑張りたい。(坂元)

種子島の浦田海水浴場で魚と一緒に泳いだ。自分たちの周りをシマシマの魚や銀色に輝く小さな魚がスイスイ泳いでいる。小学一年生の足の立つ浅瀬で「見て見て、ここにもいるよ、あっちにもいるよ」と大人も子供も大はしゃぎ。まるで映画の世界のような美しい大自然だ。
昨年の鹿児島県の海水浴場(奄美の海も含む)の水質検査でナンバー1に輝いたとか。
守りたい!この美しい海を。そしてこの感動を伝えたい!未来の子供たちにも。(桑水流)

大変な事のあった2011年。「ながいぼうにみじかいぼう。ささえあったら人になる。ささえるから人なんだ。ささえられるから人なんだ」。このCMを耳にするたびに、人との絆、家族の絆を実感し再認識した年でした。辰年の今年、私も年女です。
希望を持ち、天に昇る竜の勢いのごとく、しっかり前を向いて進んで行きたいと思います。そして、職場に於いても、みんな輪になって和やかな雰囲気の中で、お仕事が出来る様、力添え出来たらなぁと願う今日です。(藤)

あの日以来、故郷というものをこれまで以上に意識している。いつでも行けるからと、5年間、戻ったことのなかった故郷に昨年は3度行った。会いたい人には会い、話したいことは話しておきたいと感じた2011年。
そして2012年。今年はどんな年になるのだろう。少なくとも受け身ではロクでもない世の中になることだけは大確定。自分の思う、人らしい当たり前の暮らしが続くよう、小さな声はあげていよう。
あと、自分の濃度を上げていきたいです。宣言しないとやらないので、ここに覚書き。
今年もよろしくお願いいたします。(梅北)

「みんなの桜島」、「アンダーズハイ・スペシャルイシュー」という、自分が企画した本を初めて刊行できた昨年。著者から原稿をいただき、校正し、レイアウトを整え、カバーをデザインし、紙を決めて、帯やチラシのコピーを考え、販路を開拓して、店頭に並べていただく。この時代に、「本を作って、売る」ことを仕事にできるなんて、どんなにすばらしいことだろう。
出版不況と言われて久しいが、それは大部数を刷って無理やり売らないといけない大手のお話。ゲリラ戦を闘う我等地方出版族の可能性はまだまだあるぜよと勝手に信じている。作りたい本は無限にある。
2012年も激しく濃密に生きるぞ!!(鮫島)

入社して5年目。まだまだ自分の未熟さを感じながら、日々奮闘中。月末は特にバタバタで疲れもピークになるのですが、営業先でかけられるお客様の優しい言葉や嬉しい言葉に疲れも和らぎ、やりがいを感じています。
あっという間に過ぎた2011年の中で、まず思い出される3月11日の東日本大震災では、多くのことを感じ考えさせられました。普段当たり前にしていることが、当たり前ではなく幸せなことなのだと気付かされました。
今自分に与えられた環境に感謝しながら、今年一年、一日一日を大切に過ごしていきたいです。(江並)


冬の寒さにも負けず、庭の南方ニワトリ軍団も、毎日元気に産卵しております!!





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鹿児島市の郊外にある民家を会社にした「自然を愛する」出版社。自然や環境、鹿児島、奄美の本を作っています。

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